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図書館マーケティング 6「見猿・言わ猿・聞か猿」
参考資料 「自由な時代の不安な自分」三浦展 昌文社

「見猿・言わ猿・聞か猿」

最近食欲を不快に感じるという人が増えてきたというのだ。食べることを楽しいと感じない、面倒だと思うという。なんだか、思い当たる。その原因は【不足】を感じないからだという。いつでも何でも食べられる時、ほしいと言う欲望が衰退し、何を食べても満足せず食欲を満たすことが幸福感につながず、不気味な感覚として体感されるというのだ。性欲やファション、情報もそうらしい。ほしいとも言わないのに、つまらない情報が大げさな演出をされて24時間垂れ流されている。そういう状況の中で、われわれは情報がほしいという気持ちをむしろ阻害されてしまう。「ほしいものがほしい」と言う欲望を欲望するという感覚が消失しつつあると三浦氏は語る。
三浦氏のいうように「自由な時代の不安な自分」は、「見猿言わ猿聞か猿」となって情報の流れる川のほとりにたたずんでいるようだ。そう考えれば、地球温暖化、テロ、いじめ、殺人という異常事態を見聞きしても、強い危機感を感じない自分に説明が付く。心や体は情報の氾濫の前で金縛りにあってしまっているのだ。食べることが面倒だ、不快だという私たちは、知ることも面倒で不快だと思っているのだろうか?ということは考えると言う習慣はもっと固く封印されてしまっているのかもしれない。福岡で開催されている高校生を対象にした次世代リーダー養成塾の感想で「学校では議論しようとしても熱く語る雰囲気がない」「学校では本音で語れない」と言っているが、それは大人の社会も同じこと。軽く楽しいのがよくて、重たくて真面目なのはかっこ悪いという風潮は、真面目はかっこ悪いという自己弁護で人間をいとも簡単に楽なほうに押し流していったようだ。多くの人が安きに付いたのだ。
欲望がないという豊かさ故の悩みの中で、知識と情報を提供するという図書館の働きを支持してもらうのは並大抵のことではない。潜在的に学ぶことを好む人たちだけに支持されているだけでは図書館の役割は果たせない。知識と情報を提供するためには、知識と情報を受け取る人たちを作りださないといけないのだ。金縛りにあっている「見猿言わ猿聞か猿」の目を覚ます大きな目覚まし時計を鳴らす仕掛け作りだ。
今、食育が問題になっているが、何でも食べれば良いわけではない。安全で栄養の高い食物をバランスよくとること。それも楽しい食事でなければ意味がない。それが健康をつくっていく。知識も同じである。質の高い知識をバランスよく学び、考える人たちを作っていく、知育が必要とされている。しかし、時代は軽いのである、正論では届かない。食欲でさえ減退している現代社会に、知識欲を増大させるには戦略が必要だ。大々的なキャンペーンをはって、知ることが楽しいという「流行」を大人・子どもに作り出すのだ。
私たちは「猿」でいいのか、「考える人」になるのか、未来はすぐそこにある。
by tsuji_bunbun | 2007-01-29 00:00 | mayoto study
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